押印をする必要があるのかないのか
本ページにはプロモーションが
含まれていることがあります
今回はこの問題を取り上げましょう。
次の表の登記欄に掲げる登記の申請を書面によってする場合において、対象書面欄に掲げる書面について、押印者欄に掲げる者が押印をする必要があるものは、次のアからオまでのうち幾つあるか。
平成19年度 問15
登記欄 対象書面欄 押印者欄 ア 建物の表題登記 申請人が記名した委任状 申請人 イ 建物の合併の登記 委任による代理人が署名した申請書 委任による代理人 ウ 建物の合体の登記 申請書に添付する建物図面であって、申請人が記名したもの 申請人 エ 土地の合筆の登記 申請人が署名した委任状であって、公証人の認証を受けたもの 申請人 オ 土地の分筆の登記 申請書に添付する地積測量図であって、その作成者が署名したもの 地積測量図の作成者
この問題を最初に見たときの私の印象はコレですね。
試験委員の方はこう考えていたのかもしれませんが…
出典:シグルイ(南條範夫/山口貴由)
それでもまぁ…ちょっとやりすぎなのでは?と思うくらいの問題ですね。
かなり細かい知識をヒッカケに使っている上、個数問題での出題ですから、実際の正答率はかなり低かっただろうと推測がつきます。
本試験会場でこの問題に当たった方はさぞ痛みを覚えたでしょうが、そのおかげで後進はこの問題から大事な知識を得ることができます(ありがとうございます)。
ということで、どんな書面に誰の押印が必要なのか、確認していきましょう。
ア
建物の表題登記において、申請人が記名した委任状に、申請人の押印は必要でしょうか。
建物の表題登記を書面申請する場合には、申請人は、本人申請であれば申請書に、代理申請であれば委任状に、記名押印又は署名をしなければなりません(令16条1項、規則47条3号、令18条1項、規則49条1項2号)。本肢の場合、委任状に記名しているので(署名ではないので)、押印が必要となります。
「表題登記か!なら印鑑証明書の提供が必要ないから、押印も不要だな!」という思い違いを誘ったヒッカケですね。
イ
建物の合併の登記において、委任による代理人が署名した申請書には、委任による代理人の押印が必要でしょうか。
委任による代理人によって登記を申請する場合には、当該代理人は、申請書に記名押印又は署名をしなければなりません(令16条1項、規則47条1号)。本肢の場合、署名をしていますので、押印をする必要はありません。
「合併の登記か!なら印鑑証明書の提供が必要だから、押印が必要だな!」という思い違いを誘ったヒッカケですね。押印をするのが申請人ではなく代理人という…ね。
まぁ、所有権の登記の有無が記載されていないことから、怪しいと感じ取れなくもありませんが、仮に所有権の登記名義人であっても、本人が押印するのは「委任状」であって「申請書」ではないので結論は変わらないんですよね…。
ウ
建物の合体の登記において、申請書に添付する建物図面であって申請人が記名したものに、申請人の押印は必要でしょうか。
土地所在図、地積測量図、建物図面及び各階平面図には、作成の年月日を記録し、申請人が記名するとともに、その作成者が署名し、又は記名押印しなければなりません(規則74条2項)。したがって、申請人は記名のみでよく、押印をする必要はありません。
図面においては、「申請人」と「作成者」で分けて考えなければならない点が注意ですね。
申請人:記名のみでOK
作成者:記名押印又は署名
という整理になります。
「図面か!これも『記名押印』か『署名』のどっちかだろ!記名してるなら押印が必要だな!」という早まった考えを誘ったヒッカケですね。
(※ちなみに、「地役権図面」はこのルールから外れていますので注意)
エ
土地の合筆の登記において、申請人が署名した委任状であって公証人の認証を受けたものに、申請人の押印は必要でしょうか。
申請人が署名した申請書又は委任状について公証人又はこれに準ずる者の認証を受けた場合は、申請人は記名押印することを要しません(規則47条2号、規則49条1項1号)。
「合筆の登記か!なら印鑑証明書の提供が必要だから、押印が必要だな!」という思い違いを誘ったヒッカケですね。(これは所有権の登記の記載がないことに加え、公証人の認証についての知識から判断可ではあります)
オ
土地の分筆の登記において、申請書に添付する地積測量図であってその作成者が署名したものに、地積測量図の作成者の押印は必要でしょうか。
ウの「作成者」版ですね。作成者は署名又は記名押印が求められますので、署名しているのであれば、押印は不要となります。
この肢にきてようやく、「『記名押印』か『署名』のどっちかだろ!署名してるなら押印は不要だな!」という判断でも正解を出すことができます。
いくつかは当てられたとしても、個数問題としての出題となると、相当難易度は高いですね。生半可な知識では太刀打ちできません。
これから勉強される方は、しっかり知識で武装しておきましょうね。