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令和8年度試験の択一式で、以下のような問題が出題されました。

筆界特定の申請をする場合において、申請人以外の対象土地の所有権の登記名義人が筆界として特定の線を主張しているときは、その線も筆界特定申請情報の内容としなければならない。

R8-18-オ

この問題の解答について、試験委員はおそらく「正しい肢」として出題しているものと考えられます。なぜなら、これを「誤り」としてしまうと、正解となる組み合わせが存在しなくなるからです。

ただし、これは明確に「誤り」です。

筆界特定申請情報には、「必要的筆界特定申請情報」と「任意的筆界特定申請情報」の2つが存在します。
「申請情報の内容としなければならない」という文言は「必要的筆界特定申請情報」を指す表現ですが、本問で問われている事項は「任意的筆界特定申請情報」に該当します。

必要的筆界特定申請情報とは

必要的筆界特定申請情報とは、その名の通り、申請情報の内容としなければならないものです。記載されていなければ、却下事由に該当します。
これは、不動産登記法131条3項及び不動産登記規則207条2項で定められています。

(不動産登記法131条3項)
筆界特定の申請は、次に掲げる事項を明らかにしてしなければならない。
一 申請の趣旨
二 筆界特定の申請人の氏名又は名称及び住所
三 対象土地に係る第31条第1項第1号及び第2号に掲げる事項(表題登記がない土地にあっては、同項第1号に掲げる事項)
四 対象土地について筆界特定を必要とする理由
五 前各号に掲げるもののほか、法務省令で定める事項

(不動産登記規則207条2項)
法第131条第3項第5号の法務省令で定める事項は、次に掲げる事項とする。
一 筆界特定の申請人が法人であるときは、その代表者の氏名
二 代理人によって筆界特定の申請をするときは、当該代理人の氏名又は名称及び住所並びに代理人が法人であるときはその代表者の氏名
三 申請人が所有権の登記名義人又は表題部所有者の相続人その他の一般承継人であるときは、その旨及び所有権の登記名義人又は表題部所有者の氏名又は名称及び住所
四 申請人が一筆の土地の一部の所有権を取得した者であるときは、その旨
五 申請人が法第131条第2項の規定に基づいて筆界特定の申請をする地方公共団体であるときは、その旨
六 対象土地が表題登記がない土地であるときは、当該土地を特定するに足りる事項
七 工作物、囲障又は境界標の有無その他の対象土地の状況

任意的筆界特定申請情報とは

これに対し、任意的筆界特定申請情報は不動産登記規則第207条第3項で定められているものであり、あくまで任意に提供するものです。したがって、記載されていなくても却下事由には該当しません。

(不動産登記規則207条3項)
筆界特定の申請においては、法第131条第3項第1号から第4号まで及び前項各号に掲げる事項のほか、次に掲げる事項を筆界特定申請情報の内容とするものとする。
一 申請人又は代理人の電話番号その他の連絡先
二 関係土地に係る不動産所在事項又は不動産番号(表題登記がない土地にあっては、法第34条第1項第1号に掲げる事項及び当該土地を特定するに足りる事項)
三 関係人の氏名又は名称及び住所その他の連絡先
四 工作物、囲障又は境界標の有無その他の関係土地の状況
五 申請人が対象土地の筆界として特定の線を主張するときは、その線及びその根拠
六 対象土地の所有権登記名義人等であって申請人以外のものが対象土地の筆界として特定の線を主張しているときは、その線
七 申請に係る筆界について筆界確定訴訟が係属しているときは、その旨及び事件の表示その他これを特定するに足りる事項
八 筆界特定添付情報の表示
九 法第139条第1項の規定により提出する意見又は資料があるときは、その表示
十 筆界特定の申請の年月日
十一 法務局又は地方法務局の表示

本問で問われている事項は規則第207条第3項第6号に該当します。つまり、これは任意的筆界特定申請情報であり、筆界特定申請情報の内容と「しなければならない」ものではありません。これは、法務省が公開している筆界特定申請書の記載例においても明確に示されています。

過去の出題に関する考察

推測ですが、試験委員は平成20年度の過去問を参考にして本問を作成したものと思われます。

筆界特定の申請に係る筆界についていわゆる筆界確定訴訟が係属している場合には、当該事件を特定するに足りる事項を筆界特定の申請情報の内容として申請しなければならない。

H20-12-オ

こちらの肢も過去問において「正しい」とされています。しかし、これも規則207条3項7号に規定される「任意的筆界特定申請情報」であり、「申請情報の内容として申請しなければならない」ものではありません。

「過去の試験でこれで正解としているのだから、今回も〇でよいだろう」という姿勢で、誤った法的知識が既成事実化されることは避けるべきです。
令和8年度試験は全体として良問が揃っているだけに、本問におけるこの瑕疵に関しては看過できず、ここに強く指摘するものです。

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