今回のテーマはこちら。

所有権の登記がある区分建物でない甲建物と所有権の登記はないが表題登記がある区分建物でない乙建物とが増築工事により合体して1個の区分建物でない建物となった場合において、合体による建物の表題登記及び合体前の建物についての表題部の登記の抹消並びに所有権の保存の登記の申請をするときは、乙建物の新築時の建築基準法第7条の検査済証を当該申請情報と併せて提供すべき所有権を証する情報とすることができる。

令和3年度 問題5 肢エ

長文ですから、ちょっと内容を整理しておきましょう。

いずれも非区分建物である甲建物と乙建物があって、甲建物は所有権の登記がある建物、乙建物は表題登記のみがある建物です。で、これらが増築により合体しました、と。
そして、これに伴い、合体による登記等を申請する際に、「乙建物の新築時の検査済証」を所有権証明書として提供できるかどうか、ということですね。

この問題の論点が何か分かりますか?
それが分かっていないと、判断を誤ることになります。

合体による登記等の申請には所有権証明書を添付しなければならないので、できると思います!!

はい、上記が誤った判断です。
これは、そういうことを聞いているのではないのですよ。

たしかに、合体による登記等の申請には所有権証明書が必要です(令別表13項添付情報欄ハ)。
その意味ではあっているのですが、なぜ、わざわざ問題文で「乙建物の新築時の検査済証」と言っているのかを考えてみましょう。

ここでは「所有権証明書が必要かどうか」、ではなく、「乙建物の新築時の検査済証を所有権証明書として提供できるのかどうか」が問われているのです。

さて、「平成5年度全国主席登記官会同における質疑応答」では、以下のような内容が語られています。

合体前の建物が表題登記がある建物であるときは、当該建物の表題部所有者又は所有権の登記名義人として記録されていることにより合体前の建物の所有者であったことは証明されているので、合体前の各建物に係る所有権証明書は提供する必要がない。

本肢の場合で考えてみましょう。
甲建物も乙建物も、いずれも既登記の建物ですよね。
ということはですよ、甲建物も乙建物も、「過去に表題登記をしている」ということです。
そして、甲建物も乙建物も、「そのときに所有権証明書を提供している」わけです(表題登記には所有権証明書が必要ですからね)。
つまり、合体前の甲建物と乙建物の部分については、所有権は既に証明済みです。

したがって、合体前の甲建物と乙建物の部分について、改めて所有権証明書を提供する必要はないのですよ。
問題文の中にある「乙建物の新築時の検査済証」というのは、乙建物部分の所有権証明書ですから、これは不要です。

あれ、じゃあ所有権証明書はいらないの?法定添付書類なのに?

いえいえ、「増築により合体」と問題文に書いてあるのを忘れてはいけませんよ。

この増築部分は今回新たに増えたところですから、まだ所有権が証明されていませんよね?
ですから、この部分についての所有権証明書を、今回の申請で提供することになるのです。
必要なのはここだけです!

未登記建物の合体だったら?

では、仮に、本肢の乙建物が未登記建物だったらどうなるでしょうか。

その場合、乙建物の部分についてはまだ所有権が証明されていないことになりますから、所有権証明書は「乙建物」と「増築部分」の2つ提供が必要です。
つまり、このときであれば、「乙建物の新築時の検査済証」が提供できるわけですね。

ということで、合体による登記等の申請においては、「既登記の建物については所有権証明書が不要」という知識をしっかり覚えておきましょう。

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