分割による所有権の登記ってなに?
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今回の題材はこちら。
甲建物からその附属建物を分割して乙建物とする建物の分割の登記をする場合において、分割前の甲建物について、現に効力を有する所有権の登記がされた後、当該分割に係る附属建物の新築による当該分割前の甲建物の表題部の登記事項に関する変更の登記がされていたときは、乙建物の登記記録に分割による所有権の登記をする旨が記録される。
平成24年度 問題14 肢オ
はい、この問題の答えは〇です。
根拠規定はこちらです。
(規則128条2項)
登記官は、分割前の建物について現に効力を有する所有権の登記がされた後当該分割に係る附属建物の新築による当該分割前の建物の表題部の登記事項に関する変更の登記がされていたときは、前項において準用する第百二条の規定により当該所有権の登記を転写することに代えて、乙建物の登記記録の甲区に次に掲げる事項を記録しなければならない。
一 分割による所有権の登記をする旨
二 所有権の登記名義人の氏名又は名称及び住所並びに登記名義人が二人以上であるときは当該所有権の登記名義人ごとの持分
三 登記の年月日
簡単にまとめると
・所有権の登記は転写しない
・代わりに「分割による所有権の登記をする旨」を記録する
ということですね。
うん、条文から〇なのは分かった。
ただ、
「なんで転写しないんだ」
「分割による所有権の登記をする旨って何なんだ」
という疑問が湧きますよね。
今回はこれを明らかにしておきましょう。
ケーススタディ
例えば、以下のような時系列で登記が行われたとしましょう。
① 令和元年 甲建物の新築(表題登記+所有権保存登記)
② 令和2年 甲建物の附属建物として乙建物を新築(表題部変更登記)
③ 令和3年 甲建物から乙建物を分割(建物分割登記)
上記の流れは頭に入りましたか?
さて、大事な前提ですが、乙建物は、甲建物の所有権保存登記の「後」に新築されています。
この場合、所有権の登記の効力は乙建物に及ぶでしょうか?
答えは「及ぶ」です。
所有権の登記の効力はその登記記録上1個の建物全体に及ぶので、後から新築したとしても対象になるのです。
したがって、③で乙建物を分割した場合、乙建物は「所有権の登記がある建物」として分割されます。
さて、ここで問題があります。
もし①で行った所有権の登記を乙建物に「転写」したらどうなるでしょうか。
①のときにされた甲建物の所有権の登記はこのように記録されています。
これを転写すると、おかしなことになってしまうのにお気付きでしょうか。
だって、受付年日付が「令和1年」です。
乙建物が新築されたのは「令和2年」です。
転写すると、乙建物は、新築日よりも前に所有権保存登記がされたことになってしまうのです。
つまり、時系列がおかしくなるので、転写することができないんですよ。
でも乙建物は所有権のある建物として分割しなければならない。
どうしよう。
そこで考え出されたのが「分割による所有権の登記」です。
転写できないなら…せや!受付年日付も受付番号も記録せんようにしとこ!
そんでもって職権で「分割による所有権です」って記録すれば解決や!
ということになったわけです。
(関西弁は私が勝手に味付けしました)
実際にはこのような感じで乙建物の登記記録に記録されます。
全く同じ論点が 平成28年度 問題13 肢オ でも問われていますね。
ちなみに、この分割による所有権の登記は登記官の職権によるものなので、登記識別情報は通知されません。
つまり、分割後の乙建物には登記識別情報はないことになります。
そのため、もしもこの後、乙建物について合併や合体による登記等を申請することになった場合は、他の建物の登記識別情報を提供するか、事前通知を利用する必要があります。
これは
平成30年度 問題15 肢オ
令和3年度 問題16 肢エ
などで論点とされています。
苦手とされている方はチェックしておきましょう。