今回はこちらの問題を取り上げます。

次のアからオまでの記述は、無効な法律行為と取り消すことができる法律行為に関するものである。これらの記述のうち、「この法律行為」が取り消すことができる法律行為のみを指しているものの組合せは、後記1から5までのうちどれか。

ア この法律行為は、行為の後一定の期間が経過することにより、確定的に有効となる場合がある。
イ この法律行為は、だれでもその効力がない旨を主張することができる。
ウ この法律行為は、その効力がない旨の主張をした時から将来に向かってのみ、効力を失う。
工 この法律行為により金銭債務を負担した債務者がその金銭の支払をした後であっても、債務者は、支払った金銭の返還を請求することができる。
オ 成年被後見人がした法律行為は、原則としてこの法律行為である。

平成20年度 問3

………

そもそも問題の意味が分かりません!!!

という叫びを何度も聞いてきました。

分かる…分かるぞお…なんなんだこれは!!
本試験でこんな問題を出されたら泣いちゃいますね。

さて、ではこの問題はどのように考えればよいのでしょうか。

これはですね。問題文の「この法律行為」という部分に

  • 無効な法律行為
  • 取り消すことができる法律行為

という言葉をそれぞれ当てはめて読むのです。
そして、

①どちらを当てはめても正しい記述になる
②「無効な法律行為」を当てはめたときのみ正しい記述になる
③「取り消すことができる法律行為」を当てはめたときのみ正しい記述になる
④どちらを当てはめても正しくない

のどれになるかを確認するわけです。
そして、③の組み合わせを探しなさい、といっている問題ですね。
(すごく大変!!)

さて、そうするとどうなるでしょうか。
一つ一つ見ていきましょう。

ア この法律行為は、行為の後一定の期間が経過することにより、確定的に有効となる場合がある。

では、「この法律行為」に、「無効な法律行為」と「取り消すことができる法律行為」を当てはめてみましょう。

無効な法律行為は、行為の後一定の期間が経過することにより、確定的に有効となる場合がある。

これは×ですね。無効な行為はいつまで経っても無効なままですから。

取り消すことができる法律行為は、行為の後一定の期間が経過することにより、確定的に有効となる場合がある。

これは〇になりますね。
取消権は、追認できる時から5年間、又は行為の時から20年行使しないと時効によって消滅します(民126条)。すると、取り消すことができなくなるので、その法律行為は確定的に有効となります。

ということで、③「取り消すことができる法律行為」を当てはめたときのみ正しい記述になります。

イ この法律行為は、だれでもその効力がない旨を主張することができる。

これも同様に当てはめてみましょう。

無効な法律行為は、だれでもその効力がない旨を主張することができる。

これは〇ですね。無効な法律行為は誰でもその無効を主張できます。

取り消すことができる法律行為は、だれでもその効力がない旨を主張することができる。

これは×です。取消しできるのは取消権者のみです(民120条)。

ということで、②「無効な法律行為」を当てはめたときのみ正しい記述になります。

ウ この法律行為は、その効力がない旨の主張をした時から将来に向かってのみ、効力を失う。

無効な法律行為は、その効力がない旨の主張をした時から将来に向かってのみ、効力を失う。

これは×ですね。無効な法律行為は最初から無効です。

取り消すことができる法律行為は、その効力がない旨の主張をした時から将来に向かってのみ、効力を失う。
こちらも×です。
取り消した場合は、初めから無効であったものとみなされます(民121条)。

したがって、④どちらを当てはめても正しくない、となります。

エ この法律行為により金銭債務を負担した債務者がその金銭の支払をした後であっても、債務者は、支払った金銭の返還を請求することができる。

無効な法律行為により金銭債務を負担した債務者がその金銭の支払をした後であっても、債務者は、支払った金銭の返還を請求することができる。

取り消すことができる法律行為により金銭債務を負担した債務者がその金銭の支払をした後であっても、債務者は、支払った金銭の返還を請求することができる。

これはいずれも〇ですね。
どちらの法律行為であっても、支払った金銭の返還請求はできます(民703条)。

ということで、①どちらを当てはめても正しい記述になります。

オ 成年被後見人がした法律行為は、原則としてこの法律行為である。

これは2つ当てはめる必要はなさそうですね。
成年被後見人が行った行為は、原則として取り消すことができる法律行為です(民9条)。
無効ではありません。

したがって、③「取り消すことができる法律行為」を当てはめたときのみ正しい記述になります。

ということで、アとオの組み合わせが正しい解答となるわけですね。

そもそも問題の意味が分かりづらい上に、分かったとしても、それぞれの肢について2パターン確認していく必要があるので、単純に見積もって倍近い時間がかかる問題です。

比較的容易なオを軸に検討する、といったやり方でないと厳しいなぁという印象ですね。

令和5年度アガルート受講生の土地家屋調査士試験合格率は63.41%(全国平均の6.56倍)

令和5年アガルート受講生の測量士補試験合格率は95.2%(全国平均の2.96倍)

令和5年度アガルート受講生の測量士試験合格率67.61%!(全国平均の6.56倍)

資料請求で講義とテキストの一部を無料でプレゼント!

1分で簡単無料体験(※会員登録後お申込みいただくと視聴できます)

資料請求で講義を無料体験